2020年10月10日(土)から13日(月)にかけて甲種輸送が行われ、特急専用車両10000系NRA(ニューレッドアロー号)4両が富山地方鉄道(富山地鉄)へ譲渡されました。
今回は、10000系NRAが富山地方鉄道に譲渡されるにあたって、西武線内の回送の様子からJR区間の甲種輸送の様子、富山地方鉄道線内の回送の様子まで、車両輸送の全行程をご紹介します。
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売却車は10000系NRA(クハ10102+モハ10606+モハ10206+クハ10106)4両
富山地方鉄道へ譲渡される対象車両は10000系NRA(ニューレッドアロー)号の4両です。
10000系NRAは通常7両編成で組成されていますが、譲渡するにあたり編成の組み換えが行われています。4両の内訳は以下の通りです。
- 10102編成:クハ10102(方向転換済み)
- 10106編成:モハ10606+モハ10206+クハ10106
上記2編成は西武線での活躍を終え横瀬車両基地まで廃車回送された後、クハ10102+モハ10606+モハ10206+クハ10106の4両編成で横瀬車両基地内に留置されていました。
廃車回送実施日
- 10102F:2020年3月27日
- 10106F:2020年3月24日
なお、2編成のうち、残った4両編成以外の車両は解体のためトレーラーの陸送によってスクラップ工場まで運び出されています。
また、クハ10102に関しては、クレーン車により方向転換が行われています。
8月27日:新101系263F 横瀬へ
10000系NRAをエスコートするため、新101系263Fが武蔵丘~横瀬で臨時回送されました。
新101系263Fは同日、横瀬~武蔵丘で行われた9102Fの臨時回送を担当した後、再び横瀬まで回送される形となりました。
8月29日:新101系263F牽引で横瀬から武蔵丘へ臨時回送
2020年8月29日(土)日中
横瀬車両基地に長らく留置されていた10000系NRA(4両)が、新101系263Fの牽引により横瀬~武蔵丘間で臨時回送されました。
動画:新101系263F+10000系ニューレッドアロー号(4両)の激レア編成!横瀬から武蔵丘へ臨時回送
8月29日:新101系263F推進運転&牽引で武蔵丘から小手指へ臨時回送
2020年8月29日(土)終電後
同日、横瀬から武蔵丘まで回送されてきた10000系NRA4両は、終電後に武蔵丘~飯能~小手指で臨時回送されました。
なお、武蔵丘~飯能の回送に関しては、10000系NRAを新101系263Fが後ろから押しながら回送する「推進運転」が実施されました。
普段推進運転は行わないため、踏切で誘導障害が起こった時のため係員を配置していました。
- 推進列車・踏切手前で一旦停止して係員を降車
- 係員・踏切遮断桿前で防護する
- 推進列車・低速で踏切を通過、踏切通過後一旦停止
- 係員・推進列車に乗り込む
- 推進列車・次の踏切に向けて発車
- 以降1~5の繰り返し
通常、武蔵丘~飯能間の所要時間は4分程度ですが、推進運転では20分以上の時間をかけて武蔵丘から飯能まで回送されました。
なお、飯能から小手指までの回送は新101系263Fが先頭に立って牽引する形で、通常の速度で回送されていきました。
動画:推進運転で本線をバック走行!10000系NRA(4両)を新101系263Fが押す
1か月間:小手指車両基地で留置
小手指に到着後、約1ヶ月間は車両基地内の端の方で留置されていました。
10月10日~甲種輸送:西武鉄道から富山地方鉄道へ受け渡し
2020年10月10日(土)終電後~12日(月)終電後の3日間にわたり、西武鉄道小手指駅から富山地方鉄道稲荷町駅まで甲種輸送が行われました。
運転経路は、小手指~所沢~JR武蔵野線 新秋津~JR高崎線 高崎(操)~JR信越本線 南長岡~あいの風とやま鉄道 魚津~富山地方鉄道 新魚津~上市~稲荷町です。
甲種輸送【西武線内】小手指~所沢
10月10日の終電後、いよいよ富山地方鉄道に向けて小手指を出発しました。
まずは翌日に備えて小手指から所沢までの2駅のみの輸送です。
この日の池袋線は、23時頃小手指~西所沢駅間の踏切において、自動車が線路内に侵入し立ち往生した影響により約1時間程度運転を見合わせました。このため、甲種輸送も1時間程度遅れての運転となりました。
甲種輸送【西武線内】所沢~新秋津
甲種輸送【JR線内】新秋津~高崎(操)
新秋津からはJR区間に入ります。
JR武蔵野線 新秋津~JR高崎線 高崎操車場までは、JR貨物のEH200-13(ブルーサンダー)が牽引します。
10000系ニューレッドアロー号がJR区間で姿を見せるのはデビュー時以来のこと。
甲種輸送【JR線内】高崎操車場
高崎操車場では、夕方から深夜にかけて、しばらくの間留置されました。
到着した時にはすでに牽引機のEH200-13は切り離され、10000系NRAだけが留置線に残されていました。
普段見ることのできないJRの車両とのコラボレーションも見られました。
甲種輸送【JR線内】南長岡~魚津
JR信越本線 南長岡からあいの風とやま鉄道 魚津までは、EF510-18(レッドサンダー)が牽引を担当します。
ニューレッドアローとレッドサンダー。
レッド同士のコラボレーションが実現です。
新潟県内は曇り予報に反して晴れ間が見えました。
絶対に撮りたかった晴れの日本海バック、最高です。
甲種輸送【JR線内】魚津駅構内入換
魚津駅に到着後は、富山地方鉄道のモーターカーによってJR線から富山地方鉄道線への入換作業が行われました。
甲種輸送【富山地方鉄道線内】魚津(新魚津)~上市~稲荷町
いよいよ、富山地方鉄道(富山地鉄)線内に入線です。
富山地鉄線内は電車牽引(14760形14763F)により、魚津(新魚津)~上市~稲荷町の経路で輸送されます。
上市駅の構造はスイッチバックとなっているため、進行方向が前後入れ替わります。
そのため、途中の中加積にて牽引電車を機回しして、中加積~上市間は推進運転で回送されました。
ニューレッドアローの先頭車両からは、カンテラ(合図灯)を用いて、後方の牽引機運転台へ停止・進行の合図を出しながらの運転となりました。
西武線内・武蔵丘~飯能間の推進運転に加えて、富山地方鉄道線内でも推進運転が見られるとは思ってもおらず、貴重なシーンを見ることができました。
当初、富山地方鉄道線内の牽引は元・西武5000系(16010形)が担当する計画があったそうで、レッドアロー×ニューレッドアローの西武車両同士の連結が見られるかもしれない、とのことでしたが…。
上市からは再び14760形14763Fが先頭になって車庫のある稲荷町まで回送されていきます。
車庫のある稲荷町ではもう1本の元・西武5000系レッドアローとも対面を果たしました。
時刻は、2020年10月13日 午前2時15分。
以上ですべての作業が終了し、3日間に渡る甲種輸送の全行程が終わりました。
動画:10000系NRA甲種輸送!埼玉・小手指駅~富山・稲荷町駅まで全区間追っかけ!
10000系NRAの運用開始は2021年度を予定
無事、西武鉄道から富山地方鉄道に譲渡された元・西武10000系NRA号は、2021年度を目安に富山地方鉄道線内での運転開始が予定されています。
4両で譲渡された10000系は、クハ10102+モハ10606+モハ10206+クハ10106の編成で組成されています。
現在、富山地方鉄道では、基本的に2両編成で運転されています(一部、3両編成)。
2両編成で運転するためには、クハ10102もしくはクハ10106の運転台にモーターを組み込まないと走ることができないため、今後モーターを組み込むための改造工事が行われると思われます。